コミュニティがホスト

場所性のある建築の触媒としてのシェアリング文化

人がいない建物。それはただの彫刻に過ぎません。絶賛し崇めることはできても、愛を感じることは稀です。テクノロジーが未曾有の進歩を遂げる中、人は天高く聳えるビル、都市、巨大建築を生み出してきました。しかしそこには人が充実した時を過ごせる空間はあまりなく、ある種、輝きは眩いのだけど一歩離れると簡単に記憶から消し去られてしまう宝石のような部分があります。

強い建築を創るためには、空間自体が人と人とをつなぐ血管の役目を果たすようでなければなりません。デジタル化が進む世界にあっては、より深く、よりシームレスな絆を追求するのは建築家にとってもかなりの努力を必要とします。コミュニティを分断する壁を破るというお題目も後回しになってしまいがち。しかし建築とは本来、人生が起こる舞台であり、コミュニティがつながる舞台なのではないでしょうか。

「吉野杉の家」は、長谷川豪が設計を手がけ、土地の職人さんたちが、土地に伝わる伝統の技で築き上げました。徹底して場所性にこだわり抜き、効率至上主義の建築に、独自のアプローチで異を唱えています。着工から完成まで、あらゆる工程で吉野住民が主翼を担い、森の守り人、伐採、森林組合、熟練大工、住宅管理のホストに至るまで、本当に大勢の人が手で触り、実現に関わってきました。地場産木材の活用のみならず、建物に息吹を吹き込んだ人すべての思いに応え、心をひとつにする家であり、豪さんはいわば地域の人材をまとめる指揮者のような役回りと言えます。

現代人が伝統工法に背を向ける中、第一次産業の町は年々廃れつつあります。ほんの数十年前まで吉野の町の人口は今の2倍もあり、その多くが持続可能な林業従事者でした。今は多くの過疎村と同じように吉野も急激な人口減少に見舞われ、わずかな観光収入に支えられています。

毎年春がくると、吉野周辺の山々には一斉に桜が咲き乱れ、地域全体で100万人以上の観光客で賑わいます。開花時期もいいものですが、ここの本当の美しさに触れたいなら、残り48週間に訪れて日々の暮らしをぜひ味わっていただければと思います。

「吉野杉の家」の本当のイノベーション。それは、毎日の暮らしをデザインに組み込み、地域コミュニティのためのシェアホームを創出したところにあります。そこには家という枠を超え、地域活性化に貢献する経済的に持続可能なエコシステムを育みたいという、切なる願いがこめられているのです。

コミュニティがホスト

ここはみんなの家です。ゲストは敷居をまたいだ瞬間から、この土地のたくましさを体験できます。1階は居住スペースとコミュニティセンターが一緒になっているので、旅の途上の人も地元の人も、「ホスト」と「ゲスト」というゆるやかな役回りで交流できます。到着したときには他人でも、出発する頃にはすっかりコミュニティに打ち解けて、「今度はうちに泊まりにきてね」という話になっているかもしれません。2階に引き取れば、交流モードを自省モードに切り替えて、自分ひとりの時間が持てます。この家の真髄はとにかく、吉野で泊まってみないことにはわかりません。

2016年10月、「吉野杉の家」は東京での展示を終え、吉野に帰還しました。移築先は木を伐採した森から5kmと離れていない故郷で、徒歩すぐのところには熟練大工さんたちが建築に使った現場もあります。家は東西に流れる吉野川に面しており、500年前から貯木場だった場所。杉の香りが匂い立つようです。釣り場もあれば、美しい山の眺めもあり、寝室は東が朝日の間、西が夕陽の間。いずれも甲乙つけがたい光溢れる空間で静かな時を過ごすことができます。

文化復興の触媒としてのゲストAirbnbは全世界に仲間がいる数少ないコミュニティ主導型ブランドです。そのビジネスモデルの屋台骨はシェアリング文化であり、人と人のつながりが深まるにつれ、世界中のコミュニティがひとつにまとまり、それがAirbnbの強さとなっています。

「吉野杉の家」は、素朴な田舎暮らしの体験というだけではなく、目に見えるかたちで未来を変える旅にみなさまを誘う試みです。Airbnbが職人&アーティスト支援直結の地域復興基金を設けたのはここが世界初。ゲストが家に泊まるたびに収益は吉野の文化遺産と未来を守る資金として役立てられます。これはいわば社会契約のホスピタリティであり、日本全土の限界集落と過疎村に文化復興のメカニズムを創出する先行事例という位置づけなのです。

この試運転成功の暁には、新築も古民家再生も含め、建築家がそれぞれの土地に根ざした家を設計して掲載し、日本全土をはじめ海外の多くの国々に展開していくことも視野に含めています。

信頼に根ざしたコミュニティ主導型の開発こそが、世界の過疎村の経済活性化の新たな原動力になるとAirbnbは考えます。かつてない規模で深まりゆく過疎化。「吉野杉の家」がこの深い川に一石を投じ、世界にさわやかなさざ波となって広がっていくことを願ってやみません。

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